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フィリピン|Tibiao川左俣遡行〜マジャアス山頂〜Bantang川右俣下降

2025.04.14

記録

日程
2025年4月14日〜18日
メンバー
たもしま、たな
天候
概ね晴れ、3日目の午後に3時間程度の雨
体4攀3悪3藪4水3
たもしま★10、たな★10
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独自の5大要素(体力・登攀・悪さ・藪漕ぎ・水量)を1〜6段階で数値化した沢の個性化パラメータです。従来のグレード(難易度)とは異なります。

・定義や意図は「源流徘徊」を参照。

・従来の一般的なグレードについては、たもしまが付けているものを採用しています。

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★10段階で評価。個人の好みや思い出要素も含みます。

  • Tibiao川左俣:4級
    岩質は角礫岩主体で、凹凸が多く、フリクションが良いため、沢登りに向いている。ヤマビルは少々、熱帯で厄介な棘のある植物は少ない。登れる滝が多く、40m以上あるKatumbal Fallsを直登できるのがハイライト。120m近い滝の高巻きや、海をバックに登る景観も開放的で、島最高峰に詰めあがるという、素晴らしい沢。ラバー適。
  • Bantang川右俣:4級?
    Tibiao川本流以上にゴルジュが発達していて、何度も懸垂下降&泳ぎが必要になる。水も澄んでいて美しい渓相で、充実した沢下降が可能。遡行するのはなかなか面倒と思われるため、今回のように下降ルートとするのが良さそうである。

フィリピンの沢の面白さは、2024年1月のアンブラヤン川下降〜キブンガン川遡行で実感した。その直後に行ったミンドロ島の沢は登れない滝が多かったが、他の沢はどうだろうかと思って地図や空中写真を見ていると、パナイ島最高峰のマジャアス山に、ナメ滝が続いていて面白そうな沢を発見。行く機会をうかがっていたが、日本の沢に行くにはまだ比較的寒い4月の、航空券の安いタイミングで行くことにした。
4/12は島内最大の都市、イロイロへの移動のみ。セブパシフィックの飛行機は1時間半以上遅れたが、待っていてくれたレンタカーを借り、すぐに近場の宿へ。4/13は観光と準備の日。島内唯一の世界遺産であるミアガオ教会と、眩い白さで著名なGarin Farmを一応観光してから、スーパーでガス(CB)と即席麺を買い、少々川エビ観察を楽しんでから、Floresへ下見に行く。

下見の時に撮影した入渓地点付近。なかなか水量の多い川だ。問題なく駐車できそうなことを確認し、近所の宿へ。

4/14早朝、Floresの橋の上に車を停めて入渓準備をしていると、集落の住民に、山で泊まるならばガイドと許可が必要と言われる。川に行くならばということでガイドは付けなくても自己責任となったが、それでも許可は必要ということで、市街地(クラシ)の役所へ戻り、900ペソを払って許可証を得る。ガイドなしでも許可証はすんなり出たので良かった。その後、警察署とFloresのバランガイホールでログブックにログインの記入。これでようやく入渓できる。

FloresからBantang川合流点まではゴーロのみで、途中までは川の左岸側に径路があり利用できる。長いゴーロを進むと、まずは怪しげな橋をくぐる。

このつり橋はしっかりしている。下山時は、このつり橋から左岸の径路へ上がった。

紫色が鮮やかな草が目を引く。

びくのような漁具もよく見かけた。時折、何か作業をしている地元の方にも出会ったが、にこにこしていて友好的であり、少し前のミンダナオ島でけんじりさんが受難したようなことにはならず、良かった。

Bantang川合流点からTibiao川二俣までも、下部はゴーロ。ところどころに青く澄んだ淵がある。

最初の滝場。厄介そうに見えたが、泳いで近づいてみると簡単だった。このあたりから小滝が出てくるが、いずれも直登できるか小さく巻ける。

手作りの梯子がかけられていたが、使わなくても容易に水線遡行できる。

巨岩帯では恒例の岩くぐり。

初日で一番まともな滝だった3段7m滝。フリクションが良いので容易。

この滝をハゼが登っていた。おそらく両側回遊種だろう。ダムなどで海と分断されずにつながっていることが感じられる。

フィリピンの川でよく見かける、挿された枝。

先端には餌がつけられているものもあり、オオウナギでも狙っているのかもしれない。

それほど面倒なものはなく進み、等高線が混んで谷が険しくなりそうな手前で幕営。快適な幕営地だった。

初日の夜は焚き火を囲む。翌日は、等高線の混み方や空中写真から核心であろうと気合を入れて臨んだ。Tibiao川左俣に入ると、滝が連続する核心部となる。

2日目はしょっぱなから滝が連続するが、登れるものが多く嬉しい。

上記の滝を登るたな。

派手なヤマビルが少しいる沢だった。

この13m滝の上がゴルジュになってそうだが、とりあえず登ってみる。

出た、登れない滝。どうしようかと思って左岸を巻き始めると…

滝の途中のこんな所へ出た。フリクションが良いので登れるだろうと判断し、たもしまリードで水線を直登する。

よかった、登れた。カムがよく効いてよかった。(たな追記:見た目以上にフリクションが良くラバーで快適)

ゴルジュにCSのこの滝も、登ってみると意外と突破できた。

この3段40m滝は登れないので右岸から巻いていくと、途中で径路に出た。こんなところまで径路があるとは。

そしてKatumbal Falls(50m2条)。当初は巻こうかと思ったが、近づくと登れそうなので、たもしまリード。左から取り付いて水流に突っ込むも断念。水流を跨いで横断し、水流の間の岩を登ってテラスに出る。

フリクションが良く、傾斜の割には登りやすい。水線から離れず良いラインで登れ、会心の登攀だった。たな曰く、爆水に突っ込んだtamoshimaは全く姿が見えなかったとのことだ。

Katumbal Fallsをフォローするたな(たな追記:とにかくフリクションが良くて快適。良い滝が登れてよかった)

2ピッチ目はたなリード。以降は容易で、爽快そのもののシャワークライミングだ。

出た、淡水棲のドロアワモチ。

裏返すとこうなっている。

この35m滝は巻きが悪かった。たなが空荷で先行してお助けヒモを出したり荷揚げしたりしたが、このルートで巻くなら最初からロープを出せば良かったかもしれない。

この沢最大の滝、Bantawug Falls。120mほどあるのではないか。登れないので左岸から巻いていくと、驚くべきことにまたしても径路があった。この径路はさらに上へ続いていたが、どこまで行けるのかは不明。沢の方向へ続く枝路もあり、それを利用して沢に戻る。

径路を外れて沢に戻り、少し下れば落ち口。素晴らしい絶景だ。

大滝の上流側も登れる滝が多い。この2段30m滝はたなリードで右から登ったが、なかなか悪かった。沢登りらしい泥臭い登りだ。

その先も滝が続く。

この滝は右から巻いたが、それなりに悪かった。

ここからは快適なナメ滝群。この滝は快適そのもの。

超快適な滝を登るたな。

ナメ滝群を登った所で幕営。夕方には周囲の稜線が赤く染まった。

2日目の幕営地。適地は限られていたが、海も見える、開放的で素晴らしい幕営地だった。高巻く滝も少なくはなかったが、それほど困難ではなく、棘や蔓の多い薮の高巻きが多かった去年のカツイル谷と比べ、かなり快適に感じた。なお、奥ノ二俣の手前にはこの辺りでは貴重な幕営適地があるが、増水には弱い。

3日目がスタート。奥ノ二俣は、両側が滝。ここは山頂へ向かう右へ。

右沢に入ってすぐのこのCS滝が結構難しく、たもしまは無理やりエイドで登攀、たなは左岸を悪い巻き。この先、水は伏流となる。

超巨岩の下を沢が流れる。

潜ってくださいと言わんばかりの岩もある。

ゴーロになってきて、そろそろ終わりかと思うが…

振り返れば海。開放的な沢を、徐々に細くなる水流を辿っていく。

まだこんなのが出てきた。最上部の1:1二俣で、右の滝と左の滝の間の急な薮を強引に登って右へ。以降は顕著な滝はない。

熱帯といえば、ウツボカズラ。

最後は苔が生えまくっている森の薮に突入する。詰めの薮はそれなりにきついが、棘は殆どない。少しで登山道に出て、さらに一投足で山頂。

パナイ島最高峰のマジャアス山に、沢から登頂成功。残念ながら山頂ではガスに包まれ眺望なし。

下山は一部登山道を利用する。Bonsai Forestと呼ばれるところは、確かに盆栽っぽい、ちょっと変わった形の木が並ぶ。

途中でLibug Fallsを過ぎる。

下山しているとスコールが始まり、雨に当たりながら急な登山道を下っていく。

すると、10名程度の登山者が休む立派な小屋が現れた。こんなところにこんな小屋があるとは。雨の中これ以上進むのは避け、今日はここまで。

別の登山隊が捕まえていたコツノテナガエビ Macrobrachium latimanus(たな追記:マクロブラキウムラテマヌス!とか呪文を叫びながら走り回るtamoshimaが面白かった)

別の登山隊の夕食。ご好意で、少しご相伴させてもらった。まずまず美味しい。

夕食の様子。現地の登山者やそのガイドから様々な話を聞くことができ、なかなか興味深かった。登った沢の主要な滝の名前も、ここで聞き取ることができた。

4日目は、小屋の脇を流れるBantang川を下る。下り始めると、すぐにこんな滝が出てきて懸垂下降。

この立派な滝も懸垂下降。

岩をくぐって泳ぐ。

飛び込んで下る滝もあった。二俣までは、クライムダウン、飛び込みと立木を支点とした懸垂下降のみで下れる。

何度も何度も懸垂下降。想像以上にゴルジュが発達していて、登った沢とは随分違っていて驚く。

日が差し込んで美しい。水も澄んでいて美しい渓相だ。

この滝も懸垂下降。

こんなに懸垂下降する沢がかつてあっただろうか。

この滝では、左岸の樹林帯を3回も懸垂下降した。

懸垂下降して左俣との合流点(Bantang川二俣)へ降りる。が、すぐ下流に通過不能なゴルジュがあり、いったん左俣の滝を登る。

登った沢ではあまり見かけなかった、白っぽいサワガニ類が多かった。

時間は余りそうなので、左俣を少し遡行してみると、こちらにも快適に登れる滝がある。

洗濯板状のナメ。

左俣のこの滝は巻くのも面倒そうなので、ここで引き返す。

ドローンを飛ばして上流を偵察してみると、なんだこのカラフルな服のようなものは?

と思ったら、岩の陰に山岳民族を発見。こんなところに!と、向こうも思っただろう。

二俣のすぐ下流にあるこのゴルジュは、水線下降するにはしっかりしたキャニオニングの装備・技術が必要となりそうで、通過不能と判断。今回は右岸から巻いた。

以降も滝は続くが、徐々にサイズは小さくなってくる。それより下流も、クライムダウン、飛び込みと立木を支点とした懸垂下降のみで下れる。

水量が増えた分、釜は大きい。

樋状滝をまたぐたもしま。予想外に充実した沢下降になったが、この沢を遡行するのはなかなか面倒だろう。

最後の幕営地。近くに湧水もあり、快適そのもの。Bantang川の滝がある部分は既に終えていたので、5日目はゴーロ歩きのみ。

集落が近くなると漁師の姿も見えてくる。写真OKとのことで、撮らせてもらった。

綺麗な湧水があったので、水中撮影。アカボウズハゼ(多分)。

リュウグウヒメエビ Caridina tupaia?

途中のつり橋で沢下降を終え、つり橋から径路に上がる。

最後は牧歌的な耕作地の合間を縫うように歩く。フィリピンの原風景もなかなか良い。

橋の上に停めた車に戻ると、川は子供達で大賑わい。川遊び客目当てに僅か7ペソでアイスキャンデーを売っていたので、購入して下界の味を楽しむ。最後にバランガイホールと警察署でログアウトの記入をして、下山の手続きも完了。

・感想(たもしま)
海外遡行において、登れる滝が多くて面倒な高巻きが少なく、渓相もよいという沢を見つけるのが難しいということは、これまでの台湾やベトナムでの沢登りから分かっていた。そんな中、今回の沢はまさに沢登り的に面白くて快適で、景観も素晴らしく、しかも島最高峰に詰めあがるという、最高の沢だった。またこのような、もしくはもっと素晴らしい沢の発見を目標に、海外遡行の試みを続けていきたいと思う。

・感想(たな)
開放的な渓相、現地らしい生き物の観察、怒涛の連瀑、超巨岩にクソデカ大滝、山岳民族や山ヤとの遭遇など盛り沢山。その土地ならではの自然や文化に触れながら、久しぶりの重厚感溢れる沢旅ができて最高だった。やはり長い沢は良い。
記録詳細はたもしまが記載してるため、その他印象に残ったエピソードを追加しようと思う。

【現地山ヤとの遭遇】
今回の周回ルートは一部登山道を通るため、3泊目は整備されたキャンプ地を使用。そこで地元山岳民族のガイド4人と、お客さん6人?くらいの大所帯パーティーと遭遇。やはり「ガイドはいないの?」と突っ込まれてしまった。沢登りに来た事を撮った写真も見せながら説明し、「こりゃガイドの方が遅れるわ」と何とかご理解(?)いただいた。
お客さんと言っても、大層な荷物を担いで悪い山道を7日間ほどかけて縦走する根っからの山ヤに見えた。「なぜ沢が好きなのか?」と聞かれ、改めて簡潔に答えるのは難しい問だなと返答に迷っていると、「我々が山を好きな理由と同じだね、すぐには答えられない」という旨のお言葉をいただき全力で首を縦に振って返した。
民族、言語の壁を超えて何かが通じ合った瞬間に見えた。

【山岳民族の翁、初めてのトーテムカム】
目尻にゴルジュのような皺を刻んだ、精悍な顔つきをした御年60の翁。言うまでもなく現地人パーティーの最年長だ。聞けば、Bantawug Falls、Katumbal Fallsの名付け親らしい。
ザックから出して干してあるトーテムカムに興味津々のご様子。英語は通じないため、ノリと身振り手振りで使い方を教えると、河原の岩にある適当なクラックに決め始めた。引っ張っても抜けない事を確認すると、中学生男子みたいなキラッキラの笑顔になって大はしゃぎ。そのままテンション上がって、決めたカムを放置し苔むして根が張った薄かぶりの7mほどの岩を裸足で登っていった。彼にはカムもロープも不要かもしれない。

装備・コースタイム

1日目:9:39 Flores – 15:52 宿泊地
(合計6:13/距離7.0km、登り606m、下り39m)

2日目:6:27 宿泊地 – 9:04 Katumbal Falls 12:21 – 12:27 Bantawug Falls 14:33 – 17:04 宿泊地
(合計10:37/距離3.0km、登り963m、下り273m)

3日目:6:38 宿泊地 – 11:01 マジャアス山 11:02 – 13:27 Libug Falls 13:49 – 14:50 Bantang River Campsite 14:51 – 14:52 宿泊地
(合計8:14/距離5.3km、登り835m、下り1,262m)

4日目:8:03 宿泊地 – 16:34 宿泊地
(合計8:31/距離4.1km、登り178m、下り635m)

5日目:7:00 宿泊地 – 10:19 Flores
(合計3:19/距離5.7km、登り14m、下り308m)

・ラバーソール適
・クライミングシューズ不要
・ロープは50m2本。2本とも使用した。

遡行図

地名

Katumbal Falls、Bantawug Fallsの名称は、3日目の午後に小屋で出会ったガイドから聞き取ったもの。Bantawugは辞書に掲載される単語ではないため、綴りに間違いがある可能性もある。Katumbalは唐辛子の意で、現地付近にそういう草が生えていることによる命名らしい。Bantawugは「長い」の意らしいが、Bangkaw「長い槍」の聞き間違いかもしれない。

フィリピン沢登りの実務情報

○パーミッション
マジャアス山[Mt. Madja-as](麓の沢を含む)に入るためにはクラシの役所で許可をもらう必要がある。所要1時間程度。1人1日あたり150ペソだが、3日以上入る場合は3日分で良いらしい。許可証を入渓地のバランガイ(Barangay)に見せて、GOサインを貰う。本来はガイド同行必須の文化のため、説得に時間がかかったが何とか入渓を認めてくれた。下山後は、バランガイホールと警察署でログアウトの記入をして手続き完了。

○地形図
https://www.namria.gov.ph/downloads/topomap50/3454-IIICulasi.jpg

○使用したレンタカー店
CarHub-Iloilo Car Rental Services
https://www.facebook.com/share/15H2KbKTko/
1日1300ペソで三菱のMirageを借りた。安かったが問題なく走り、良かった。

他の記録

記録未見だが、山岳民族が日常的に山に入っているエリア内だ。

〇本件ヤマレコはこちら

1994年生。ぶなの会所属。大学に入ったタイミングで沢登りを始め、沢登り歴13年、訪れた沢は約1000本。沢を登るだけでなく下りも交え、一層その流域への理解を深めたいと考えている。最近は、情報の乏しい隠れた秀渓を探すのにハマっている。

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