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【川内】常浪川 内沢左俣左沢遡行・南大谷沢下降

2026.07.04

川内山塊は良い。豪雪が磨いた急峻で独特な渓谷美と、標高の低さ、人臭くなさ、それでいて所々見られる山仕事の名残、その他諸々が合わさり他の山域にはあまり無いような原始性や野性味がある。下田、室谷、会越国境など周囲の山域と合わせて特に好きなエリアだ。
以前から1泊での周回を考えていたルートだが、と○氏が4時間で内沢を遡行した記録から時間的な余裕を感じたため、最近の記録が少ない沢を追加で数本繋ぎ、探索してみようと計画を立てた。

記録

日程
2026年7月4日~5日
メンバー
たもしま、たな
天候
晴れ
体2攀3悪4藪3水1
満足度
たもしま★4、たな★6
  • 内沢左俣左沢
    下部の大半は殆どゴーロのみの沢だが、550mより上流はスラブが発達し、雪渓も残りやすく、スラブも発達している。特に左俣左沢は沢通しの遡行が絶望的なゴルジュとなっており、その悪絶さは一見の価値がある。
  • 南大谷沢
    大理石が多いという特徴があるが、ゴーロが長い沢で、遡行対象としては魅力に欠ける。下りやすいので他の沢を遡行した場合の下降ルートとしては使いやすい。しかし、沢中と県道とを行き来するのが藪により面倒である。

ゴール予定の新大谷沢橋付近に電動キックボードをデポし、宇治沢橋(うじさわばし)の脇から入渓。ゴーロ主体だが明るく、雪国らしい側壁が広がり渓相は良い。平和に、順調に登っていく。今日の行程はまだ長い。

Co.547の二俣を過ぎると、地形図でも顕著に”何かありそう”なエリアに入る。
水平距離なら既に内沢の4/5程度の行程を歩き終わっているが、この沢の本番はここからで、早速雪渓が出てきた。すぐ近くの谷沢川では雪渓が無い記録を確認していたが、内沢上部はガッツリ残るらしい。

登ったり、くぐったりしながら処理していく。

二つ目のスノーブリッジを降りるときだった。先行するたもしまがズルズルボットンと軽快な音を立てて降りて行ったのを見て油断し、雪渓末端の薄い部分に近づき過ぎてそのまま踏み抜いてしまった。危ない危ない。

雪渓ごと落下、ブロックをクッションに着地

次に出てくる雪渓も下をくぐるのだが、崩落が進んでいて、出口はグズグズのブロックが積み重なり嫌な感じだ。慎重に1人ずつ通過。通過した先に出ててきたのは、登りにくそうな7m滝だった。

ズタボロの雪渓が出口を塞ぐ
右巻きをリードするたな

直登は不可に見える。たもしまが水流左に取り付いてみたが、「何もない」的なことを言って戻ってきた。水流右もエイドならワンチャンか…?と思ったが厳しそう。となると次の選択肢は右巻きで、川内のこういうのはだいたい悪いと想像は付いたがとりあえず私がロープを引いてみる。

うん、普通に悪い。

下から見るとスタンスありそうに見えた壁は、貧弱な草が生えた岩とも泥とも言い難いツルツルスラブだった。日が昇り、気温が上がり、背後では雪渓の崩壊音が不気味に響く。今、間違いなく我々は登れない滝と側壁と戻りたくない雪渓に閉じ込められている。そんな状況なので頑張ってみたが、最後にどうしても一手出したくない箇所が出てきてしまい撤退した。下にいるたもしまに状況を伝えるも信じてもらえず、リード交代するも同じ場所で逡巡したのち撤退して戻ってきた。

ここでようやくクライミングシューズを持ってきたことを思い出し、たもしまがそのまま履き替えて、先刻諦めた左壁を無事に登り切った。かなりのタイムロスが発生したが、とりあえず突破できてよかった。もっと手前からなら楽に巻けたかもしれないが、雪渓は一度くぐったら迂闊に戻れない可能性も考えないといけない。久しぶりの雪国の沢でルーファイがアホになっているなと反省した。

クライミングシューズならスムーズだった

7m滝を越えて少し進むと、Co.575の二俣だった。大蕎麦谷沢上部をミニチュアにしたようなT字路状の二俣になっていて面白い。いくつか小滝を登って進むと、Co.618の二俣を過ぎた先でまたデカい雪渓が現れ、雪渓の上を歩き谷の屈曲を越えたら、どうしようもない地形が広がっていた。

登れない&巻けない地形が続くスラブゴルジュを、雪渓が塞ぐ。航空写真で非常にそそられるスラブ帯を確認し、渓相良いだろうなと思っていたらこんな魔窟だったとは。いや、実際景色は凄いんだけども。
この光景を見て、今回計画したルートは明らかに時間が足りない事を悟った。川内おそるべし。
問題はどうやって敗走するかだが、引き返しは微妙だし、せっかくなら南大谷沢だけでも繋げたいので、この魔窟を左岸全巻きトラバースでどうにかする脱走作戦を敢行した。

巻き途中。前方に見えるコルを目指す。
右岸スラブの圧がすごい。早出川流域に絶対行かせない気迫を感じる。
もともと詰めようとしていた内沢本流。あそこに行けたとして、詰められただろうか?

トラバースが悪く、結局殆ど尾根まで上がって巻く形になった。早出川ゼンマイ沢とのコルに到着し、下降を開始する。ゼンマイ沢上部を経由して、南大谷沢をなるべく源頭から下る算段だ。少し進むと、この辺では珍しく湧水付きの平場があったので即決で幕営地とした。

翌朝、ゼンマイ沢右俣左沢を進む。この辺は石灰岩の岩脈があるため、河原に転がる石も様子が変わってきた。特に通過に困ることなく、943ピークの脇を通って南大谷沢の下降を開始。南大谷沢に入ってからも純粋な石灰岩というより大理石のような岩が目立ち、面白い。

真っ白大理石の岩間滝。この基盤岩のままゴルジュになったら凄かっただろうな。

Co.430前後を境に、岩質は花崗岩に戻る。クライムダウンや懸垂を交えながら順調に下降していく。

滝場が終わると、フィナーレは真っ白で綺麗なゴーロ帯だった。
堰堤を巻き、大谷沢に少し入った先の藪斜面から脱渓。途中で見つけた謎の用水路が、今もせっせと水を流していた。
県道に上がる時の藪漕ぎが少し面倒だったので、最初から旧道に車を停めた方がスマートかもしれない。

最近の沢登りは、多少条件が厳しくても何とかなる(何とか弱点をこじ開けて突破できる)事が多かった。しかし今回は、清々しいくらいにどうしようもない地形と久しぶりに対峙した気がする。新潟の、川内の沢のポテンシャルは素晴らしい。良いものが見れた。
同時に、人間がどうにかできる範疇なんてたかが知れてると改めて実感できた。沢ヤは、沢に対する謙虚さだけは絶対に忘れちゃいけないと思う。
今回繋ぎ損ねた他の沢は、またルートを変えて探索する予定だ。

装備・コースタイム

40mロープ、ラバーソール、クライミングシューズ、ハーケン

【1日目】駐車スペース8:19-幕営地19:10
【2日目】幕営地8:15-詰め終わり9:45-ゴール地点16:28

遡行図

地名

・遡行した沢は、地理院地図では「内沢」だが、橋梁名は「宇治沢橋(うじさわばし)」である。
・新大谷沢橋を「しんおおたにざわばし」と読むので、南大谷沢は行政上は「みなみおおたにざわ」と読むと思われる。

下山メシ&周辺施設

・小瀬ヶ沢洞窟
国指定文化財だが、狭く鬱蒼としており、正直あまり暮らしやすくはなさそうな洞窟だった。

・かつ丸津川本店
津川IC周辺の貴重な飲食店のひとつ。安定の旨さである。

他の記録

○内沢:以下の1件のみを確認。
流れに逆らう by と〇 2007年10月
 詳細は書かれていないが、左俣右沢を登り、右俣を下っていると思われる。特に難所はなかったようなので、左俣左沢だけが突出して困難なようだ。

○南大谷沢:記録は以下の1件のみ確認。
・わらじ年報25 わらじの仲間 2001年9月 L熊倉、右高、渕上、岩永
 南大谷沢~矢沢川ヨモギ沢~鍋倉山~大谷沢下降
この他、トマの風の田邉(一)・斎藤(健)・煤孫が2009年に、yamakurumiが2022年に遡行しているが、記録は未確認。

〇本件ヤマレコはこちら

1996年生。社会人から沢を始め実践歴8年、訪れた沢は約600本。SAWA MAFIA所属、源流徘徊主宰。山・渓・里を繋ぐ沢旅が好き。オリジナルラインの遡下降と山の背景ネタを大切に、沢起点で流域の風土をまるごと読み解く探究を目指しています。