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大井川|聖沢 奥聖沢〜奥聖の滝沢〜前聖の滝沢〜奥赤石沢 奥雪渓沢〜下奥雪渓沢(仮称)

2025.09.14

記録

日程
2025年9月14日〜17日
メンバー
たもしま、たな
天候
1日目:曇り、2日目:曇り一時雨→晴れ、3日目:晴れ、4日目:曇り→晴れ
体5攀3悪3藪1水3
たもしま★10、たな★10
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独自の5大要素(体力・登攀・悪さ・藪漕ぎ・水量)を1〜6段階で数値化した沢の個性化パラメータです。従来のグレード(難易度)とは異なります。

・定義や意図は「源流徘徊」を参照。

・従来の一般的なグレードについては、たもしまが付けているものを採用しています。

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★10段階で評価。個人の好みや思い出要素も含みます。

  • 聖沢本流:4級下(今回遡行)
    聖沢吊橋より下流にも檜垂というゴルジュや右岸枝沢に100m近い滝があり、悪くはない。大垂は圧巻で、うまく巻けば懸垂なしで落口に出られる。小垂から始まるゴルジュもスケールと登り応え・巻き応えがあり面白い。
  • 奥聖沢[聖沢右俣]:3級上(今回遡行)
    ゴルジュが発達した沢だが、ゴルジュ内の殆ど全ての滝が登れるため、かなり面白い。遡行時は濃いガスのため眺望がなかったが、おそらくゴルジュを抜けた先では景観も開けていて素晴らしいだろう。
  • 奥聖の滝沢:3級(今回下降)
    前聖の滝沢の隣にある沢だが、前聖の滝沢と比べると登れない滝が多く、高巻きが多くなる。どちらかを登るのであれば前聖の滝沢を登るのがお薦めだが、奥聖沢を登った後にこの沢を下り、前聖の滝沢を遡行すれば、全て味わえる。
  • 前聖の滝沢:3級上(今回遡行)
    出合の連瀑の激シャワークライミングから始まり、かなり多くの滝が快適に登れる秀渓。開放的で景観も優れている。赤石沢流域らしい、赤い岩の滝も見応えがある。どうせ登るなら聖沢本流から継続すると充実する。
  • 奥赤石沢 奥雪渓沢:2級上(今回下降)
    百間洞出合〜奥赤石沢出合間は概ねゴーロ。奥雪渓沢に入ると、すぐに赤い連瀑帯があって素晴らしい景観だが、上部は非常に長いガレとなっている。奥雪渓沢に入るなら、下部だけを楽しむか、下降ルートとして通る方が飽きないのではないかと思う。
  • 下奥雪渓沢(仮):4級下(今回遡行)
    ゴルジュと登れる滝が連続する渓相で、いかにも沢登りに適している。30mある大滝が直登できるのも特筆点。水がほとんど涸れかけたところで圧倒的なゴルジュが出てくるのに、その中のすべての滝が登れるというのも素晴らしい。赤石沢から継続で登るのにお薦めの沢。
  • 聖平沢:1級下(今回下降)
    特に滝はなくゴーロが続く沢だが、所々に綺麗な湧水もあり、登山道を歩くよりは変化があって楽しめるかもしれない。

    ※訪渓順に掲載

聖沢は大井川上流部で代表的な沢の1つであり、今年実施した大井川上流部集中調査の対象として、欠かせない1本である。しかし調べてみると意外と記録は少なく、出合から山頂まで通して遡行する記録は見当たらない。それなら、やってみようではないか。ついでに、良さそうな支流である前聖の滝沢と奥聖の滝沢も行きたいし、赤石沢側の下奥雪渓沢も気になる。ということで、3泊4日の日程を確保し、これらを繋げた継続遡下行を計画した。

聖沢本流(1日目)

リニア中央新幹線工事の事前環境調査として、東俣林道通行許可を頂き、新鉄砲堰橋の南側の空地に駐車。赤石沢ダムが水をためていないため、普段は湖底であろう所を歩いて聖沢へ向かう。

長いゴーロを歩いていくと、檜垂が現れる。軽く泳いで水線左を直登。

この檜垂で、昭和24年8月に亡くなった方がいたようだ。それほど危険箇所には見えないが、増水していたのだろうか。古そうなプレートだが綺麗に残っている。

檜垂を過ぎると、右岸に4段103mもある大滝が合流してきた。名前でもありそうな滝だが、いくら調べても出てこなかった。この沢は下鉄砲沢なので、「下鉄砲沢大滝」と仮称する。

聖沢吊橋をくぐって少しすると、ゴルジュ状になってくる。

最近の資料で「小垂」とされているのは堰堤直下のこの滝だと思うが、旧来の資料とは整合しない。左から直登。

聖沢堰堤:赤石沢堰堤のように簡単に登れるものを想定していたが、そうでもなかった。

右岸に怪しげな残置梯子があり、これを使って堰堤を巻く。

巻いた後、ぐにゃっと曲がった怪しげな梯子で水流に戻る。この梯子が抜け落ちたら懸垂下降でも必要になりそうだ。

大垂:水量も多く圧巻の滝。左岸の草付きから小さめに巻いていくと、

懸垂下降もなしにちょうど落ち口に出られた。

大垂の上は、巨岩ゴーロに岩間滝が続き、結構登りづらい。

この岩間滝も結構大変だった
この岩間滝も曲者
ツートンカラーが明瞭な転石

周りが赤くないだけに、岩の赤さが際立つ。

開放的なゴーロを経て、赤ベト沢出合。赤ベト沢は連瀑になっている。

これが本当の小垂。直登はできそうにないので巻いていくが、小さめに巻いたらなかなか悪かったので、ロープ使用。

この9m斜瀑もまとめて巻いた
10m斜瀑の滝つぼは少しだけ泳ぐ

7m幅広滝を登ると、奥聖の滝沢出合。

20m滝は水流右を快適に直登。さらに右に残置スリングもあるが、残置のあるラインの方が悪そう。

30m滝は、水流の奥から小さめに巻く。

17m滝の水流左を直登すると、

前聖の滝沢出合。また明日、ここに戻ってきてこれを遡行する予定。

再びゴルジュとなり、直登不可な8m滝が出てくる。左から小さく巻くが、これもなかなかの悪さ。

さらに3m、5m滝が続くが、これらは大して苦労しない。

そろそろ幕営というタイミングで、泳がされた。

風通しの良いテンバで少し寒かったが、格好良いヤマトイワナが釣れた。

奥聖沢〜奥聖の滝沢(2日目)

翌朝、聖平沢(聖沢左俣)と奥聖沢(聖沢右俣)の二俣。左の方がやや水量が多いかな。

奥聖沢は平穏が続いた後、急にゴルジュになる。

ガスってきたのが残念だが、ゴルジュは立派で、登れる滝が連続し、面白い。

5mCS滝を右から小さく巻いたが悪い。

6mCS滝をつっぱりで登る
まだまだゴルジュは続く
だんだん開けてくる
開けてきても滝は続く

水もなくなりガスの中を詰めていくと、ライチョウ発見。たなが喜ぶ。

稜線に出ると、急に晴れてきた。

奥聖の滝沢の下降に入るが、上部はゴーロ。

少しずつ滝が出てくるが、概ね下りやすい。

出た、赤い岩盤
2段20m滝を懸垂下降
続けて、2段10m滝も懸垂下降

40m大滝の上の8m滝と18m滝。18m滝だけ懸垂下降したが、まとめて巻いた方が楽だった。

40m大滝:ロープは50m1本しかないので左岸大高巻きで下る。

大滝の下は快適な斜瀑が続く

出合にある2段40m滝:左岸から容易に巻ける。

昨日も登った3つの滝をまた登って、前聖の滝沢出合のすぐ上流の幕営地へ。

幕営地の上流の釜で釣りをするたな
幕営地は快適だった

前聖の滝沢〜奥赤石沢 奥雪渓沢(3日目)

翌朝、前聖の滝沢は7段75m滝から始まる。4段目で激しいシャワーを浴びる。

6段目もシャワー

7段目は大きい。下部は直登困難そうなので右から小さく巻いたが、小林&成瀬Pはここも右壁を直登したらしい。

7段目の上段は傾斜も緩むので、水線右脇を直登。

16m滝はかなり頑張れば直登できるかもしれないが、右岸から容易に巻く。

続く6m滝はシャワークライム
10mCS滝は左から巻く

多くの快適な滝を越えていくと、赤い岩が綺麗な”下の大滝”が現れる。上段の15mは直登できず、左から巻く。

ゴーロを経て”上の大滝”。左から登り始め、トラバースして、水量の多い右俣へ。

上の大滝の上は、ナメが結構綺麗。

2687三俣で右に入ると、10mのハングした滝が出てきた。左から小さめに巻く。

順調に詰めあがって時間に余裕があるので、濡れたツェルト等の装備を稜線上で乾かした。

奥雪渓沢の上部は急なガレで、下りやすくはない。

ひたすらガレを下る

水が出てきてしばらくすると、3段15m滝が出てくるので、左岸から巻き下った。

その下流側は岩の斜瀑が美しい

赤い連瀑を巻き気味に下っていく。なかなかの見応え。

下奥雪渓沢出合に幕営適地を見つけたので、今日はここまで。この後、空荷で百間洞出合まで見に行ってみたが、大したものは無かった。

下奥雪渓沢~登山道下山と聖平沢下降(4日目)

下奥雪渓沢は、快適に登れる連瀑から始まる。

3mCS滝と7mCS滝から始まるゴルジュ。まとめて巻こうか考えたが、近づいたら登れそうだったので、エイドして登攀。

7mCS滝は、左岸を際どいトラバースで越える。

絶望的な3段15m滝は右から容易に巻く。

この沢最大の、多段30mの滝は、ラッキーなことに水線を直登できた。

大滝の上の3m滝は、小さいが登りにくい。岩の赤さが際立っている。

開けて威圧感がなくなってくる

湧水が多い場所を経て水がかなり減るが、地形はむしろ険しくなってきた。

凄いゴルジュの中に15mの滝、意外と快適に登れる。

その先の10m滝も、威圧感の割に登りやすくてお買い得。

最後の9m滝は傾斜が強いが、ホールドは豊富。

2546二俣は、左の方が水量は多いが、詰めが面倒になりそうなので、右へ。長めのガレを経て登山道に詰めあがった。

最後は聖平沢を下降してみた。特に何もないが、登山道を歩き続けるよりは変化があって良かった。

登山道の滝見台からは奥聖の滝沢(右)、前聖の滝沢(左)の滝が良く見え、感慨深い。

・感想(たもしま) 
 初日、檜垂は思ったより立派で、遭難プレートまであったのは意外だった。大垂はうまく巻けて良かったが、その先の巨岩帯が意外に難しく、時間がかかった。さらには小垂のゴルジュや前聖の滝沢出合の上流のゴルジュが予想以上に悪く、登山大系等に書かれている、赤石沢より易しいというような記述は嘘だと分かった。登り応えがある分だけ、充実感もあった初日だった。
 2日目、残念ながら天気はすぐれなかったが、奥聖沢は立派なのに突破できるゴルジュが素晴らしいと感じた。奥聖の滝沢では天気に恵まれたが、登れない滝が多かったので、下降に取ったのは正解だった。聖沢本流に戻ると、昨日も登った滝が待っていて、何をやってるんだかと馬鹿馬鹿しくなってくるのも面白い。
 3日目、前聖の滝沢は非常に快適で眺めも良い沢で、好天に恵まれてよかった。奥雪渓沢はガレばかり続いてつまらないと思っていたが、下部になって赤い立派な滝が出てきて、いかにも赤石沢流域らしい、よい場所だと思った。
 4日目、下奥雪渓沢は、想像以上に登れる滝が多く、しかも適度に登り応えもあるし、ゴルジュの見応えもあって、かなり良い沢だった。こんな沢が記録もないまま、メジャーな赤石沢流域に残っているなんて、やはり開拓は面白い。最後は長い長い登山道を下って、充実感と共に下山。

 全体としては、赤石沢の時に続いて思い描いたとおりの継続遡下行を完遂でき、大変満足である。東海フォレスト縛りがあるので簡単に行ける沢ではないが、わざわざ行く価値のある、南アルプスを代表する1本だと思う。沢慣れした人にお薦めできるのは、赤石沢〜百間洞などというメジャーすぎるルートではなく、聖沢〜奥聖沢や、赤石沢〜下奥雪渓沢である。

・感想(たな)
今回も良い沢で良い落書きができて満足だった。
赤石沢と双璧を成す、大井川流域を代表する銘渓だろう。
東海フォレスト縛りも相まってか、あまり開拓が進まず残っていた支流群だが、纏めて調査できた。元々リニア調査の名目だったが、もはや趣味だよねこれ?まぁ、ご愛嬌ということで…。我々に出来るのは「大井川の魅力を発信する」ことだ。

装備・コースタイム

1日目:7:48 聖沢登山口 – 7:54 神の鳴合 – 9:06 檜垂 9:13 – 9:45 聖沢吊橋 9:49 – 10:12 聖沢堰堤 10:30 – 10:45 大垂 11:51 – 13:54 小垂 14:44 – 16:43 宿泊地
(合計8:55/距離8.7km、登り1,322m、下り314m)

2日目:6:20 宿泊地 – 10:11 聖岳 10:12 – 10:34 奥聖岳 10:40 – 13:36 奥聖の滝沢大滝 14:27 – 15:35 宿泊地
(合計9:15/距離6.0km、登り1,111m、下り1,182m)

3日目:6:30 宿泊地 – 9:03 下の大滝 9:26 – 9:51 上の大滝 9:59 – 11:22 稜線上 12:22 – 14:36 奥雪渓沢出合 – 16:09 百間洞出合 16:13 – 16:26 宿泊地
(合計9:56/距離5.0km、登り998m、下り955m)

4日目:6:01 宿泊地 – 10:38 聖岳 10:39 – 11:05 小聖岳 – 12:00 聖平小屋 12:01 – 12:34 下南沢 – 13:11 滝見台 13:17 – 13:29 薙沢 – 13:58 乗越 14:00 – 14:26 造林小屋跡 14:27 – 15:01 聖沢吊橋 – 15:32 出会所小屋跡 15:35 – 15:38 東尾根分岐 15:40 – 15:55 聖沢登山口 15:58 – 15:58 帰着
(合計9:57/距離12.3km、登り1,187m、下り2,177m)

・ヌメる箇所もあるが全体としてはラバーソール適
・ロープは50m1本を使用

聖沢流域 概念図

聖沢概念図
聖沢概念図

遡行図

聖沢〜奥聖沢 遡行図
奥聖の滝沢、前聖の滝沢 遡行図
奥雪渓沢、下奥雪渓沢 遡行図
聖平沢 遡行図

地名

登山大系の記述は現代登山全集の記述内容とほぼ同じであり、確認を取らずに踏襲したと思われる。現代登山全集の内容は極めていい加減で、小垂、檜垂沢、上鉄砲沢、「大タレ」(誤読)等、多くの地名が間違っており、誤情報を流布した元凶となっている。

○檜垂、蓬垂
 「中部山岳の渓流」(鈴野,1983)では「蓬垂」だが、「南アルプスと其渓谷 : 時間記録と費用概算」(平賀,1931)や「南アルプス : 附・八ケ岳連峯」(渡辺ほか, 1935)等、多くの資料では「檜垂」としているため、本記録でも檜垂とした。ひのきたる/ひのきだると読む。

○ベト沢、檜垂沢、下鉄砲沢、上鉄砲沢、蓬沢
 これらの地名は日影沢〜大垂の区間の右岸支流の名称だが、どの沢がどれなのかについては資料によって異なり、混乱を招くため、ここで整理する。「南アルプスと其渓谷 : 時間記録と費用概算」(平賀,1931)の巻末の概念図では、下流から順に右岸に「ヒカゲ沢」、〈名称の書かれていない水線〉、「ヒノキダル沢」、「下テッポウ沢」、「上テッポウ沢」があり、「ヒノキダル沢」の出合付近に「檜垂」がある。他方、「炉辺 第5輯」(明大山岳部編, 藤井運平著, 1931)の図では、「日影沢(十六号)」「十七号」「十八号」「十九号」「二十号」があり、十七号と十八号の間、及び十九号と二十号の間に鉄砲が描かれている。なお、この号数は、特種東海製紙の前身である東海紙料による呼称であり、鉄砲とは、伐採した木材を水と共に一挙に流すための堰である。また、「中部山岳の渓流」(鈴野,1976)では、十七号に「ベト沢」、十八号に「蓬沢(別名:上鉄砲沢)」となっている。以上を考慮し、次のように整理した。

・1213右岸支流:ベト沢
 平賀(1931)による名称の書かれていない水線であり、藤井(1931)による「十七号」。この沢の源頭には崩壊地があるが、聖沢の別の支流である赤ベト沢源頭には赤い岩の崩壊地があり、奥西河内の支流の青ベト沢の源頭にも崩壊地がある。この一致から、この山域における「ベト」は崩壊地を意味すると考えられ、崩壊地のあるこの沢に「ベト沢」の名があるのは妥当と言える。
・1235右岸支流:檜垂沢
 「ヒノキダル沢」の出合の位置に「檜垂」があるとする平賀(1931)とはやや整合しないが、すぐ上流に「檜垂」があるので、大きな不一致ではない。
・1277右岸支流:下鉄砲沢
 藤井(1931)の図ではこの上流に鉄砲が描かれており、整合する。なお、この支流の出合には大滝があり、名称がないのが惜しいほど立派なので、「下鉄砲沢大滝」と仮称を付す。
・1360右岸支流:上鉄砲沢 [蓬沢]
 藤井(1931)の図ではこの下流に鉄砲が描かれており、整合する。「南アルプス : 附・八ケ岳連峯」(渡辺公平ほか,1935)にはこの出合辺りに「蓬島」という場所があったと書かれており、「蓬沢」はこれに由来する別名と考えられる。

○小垂(こたる/こだる)
 小垂は、1900m付近から始まるゴルジュの最初の滝の名称である(平賀,1931など)。1960年までの記録では全てそうなっているが、昭和山岳会による現代登山全集(1961)の記録において、大垂の下の滝が誤って小垂とされてしまった。この記録は、大垂上から二俣まで2時間で遡行しており、小垂から始まるゴルジュをすべて高巻き、見てもいないと思われる。これがそのまま登山大系にも受け継がれ、今では大垂の下の滝が小垂として定着しつつあるが、誤りである。

○タケビル沢、赤ベト沢
 「中部山岳の渓流」(鈴野,1976)に記載されている地名。
 赤ベト沢は小垂のすぐ下流の左岸支流で、確かに上部には赤い崩壊地があるので、正しそうである。「関東周辺の沢」の遡行図(1985)では奥聖の滝沢=赤ベト沢としているが、沢名について「中部山岳の渓流」を参考にし、位置は誤っていると思われる。
 タケビル沢は、1787左岸支流の位置に描かれているが、「中部山岳の渓流」の概念図は不正確なこともあるので、実際は1765右岸支流かもしれない。「タケビル」の意味もよく分からない。

○奥聖の滝沢、前聖の滝沢
 初登した蒼山会同人によって1973年に命名。前聖の滝沢の方が上流にあるので紛らわしいが、前聖岳に詰め上がれる方を前聖の滝沢、奥聖岳に詰め上がれる方を奥聖の滝沢としたとのこと。登山道から滝が良く見えるのに、意外にも、沢にも滝にも名称は無かったらしい。

○奥聖沢
 登山大系では聖沢右俣、「その空の下で。。。」では聖沢本谷としているが、「赤石溪谷」(平賀,1933)等に従い、奥聖沢とした。

○奥雪渓沢
 「赤石溪谷」(平賀,1933)等によると、登山大系の236ページにある概念図の「奥雪渓沢」の位置は誤りであり、下奥雪渓沢の位置に奥雪渓沢と書かれている。237ページの図は正しい。

○下奥雪渓沢(仮称)
 奥雪渓沢のすぐ下流で合流することから、下奥雪渓沢と仮称した。山と渓谷320号(1965年9月)で「奥聖岳沢(仮称)」とされているが、奥聖沢や奥聖の滝沢と紛らわしいため、採用しない。

大井川流域は昔から登山や沢登りだけでなく、パルプ産業等でも人々との関わりが深い山域だった。
ゆえに、細かい地名が様々な文献に記載されているのだが、これが大錯綜している。
特に、現代登山全集やら登山大系やら「自分は行った事ないけどこうらしいぜ」と他者の記録を検証せず寄せ集めた一部の記事が、ややこしさに拍車をかけている。
しかし、インターネットも無い時代に「記録集」という位置付けは多くの山ヤ沢ヤにとって嬉しいものだっただろう。
ネットも発展し、国会図書館という神サービスもあり、ヤマレコのようなサービスもあり、様々な地図情報も簡単に閲覧できる環境がある現代だからこそ、正しく検証したうえで先人の情報を生かしていきたいと思う。

他の記録

○聖沢本流
・聖平への登路として大正時代以前から登られているが、小垂から始まるゴルジュは薙沢経由で大きく巻かれている。
・確認できた最も古い記録は、山岳16巻2号(日本山岳会, 1921)に掲載された、1921年7月、冠松次郎によるもので、詳細な経路は不明だが聖岳山頂まで達している。
・小垂のゴルジュ内の初遡行については不明。
・近年の記録も比較的多い。遡行図のあるものとしては弘田猛の「その空の下で。。。」(2006年8月)がある。
http://sonosoranoshitade.web.fc2.com/page056.htm

○奥聖沢
・初登は不明。
・確実な記録は弘田猛の「その空の下で。。。」(2006年8月) のみ確認しているが、古い残置もあり、かなり昔から遡行されていることは間違いない。
http://sonosoranoshitade.web.fc2.com/page056.htm

○奥聖の滝沢
・1973年9月に蒼山会同人により初登。岳人327号に掲載(未読)。
・初登以外の確実な記録としては「わらじ年報20」に掲載の1996年8月のもののみを確認している。
・2002年12月に下部がアイスクライミングで初登されている。
https://www.big.or.jp/~arimochi/kiroku.03.01.20.01.html

○前聖の滝沢
・1973年8月に蒼山会同人により初登。岳人326号に掲載、新岳人講座5に再掲。
・近年の記録も比較的多い。遡行図のあるものとしては弘田猛の「その空の下で。。。」(2006年8月)
http://sonosoranoshitade.web.fc2.com/page056.htm

○奥雪渓沢
・1970年代の岳人や山と溪谷で言及されているが、記録が掲載されているかは未確認。
・1992年5月にこの沢を滑落遭難し、生還した記録がある。
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-267376.html

○下奥雪渓沢(仮称)
・記録未見だが、下部に残置ハーケンを1本だけ確認した。完登されていたのかは不明。

〇本件ヤマレコはこちら

1994年生。ぶなの会所属。大学に入ったタイミングで沢登りを始め、沢登り歴13年、訪れた沢は約1000本。沢を登るだけでなく下りも交え、一層その流域への理解を深めたいと考えている。最近は、情報の乏しい隠れた秀渓を探すのにハマっている。

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