大井川|赤石沢~クズレ沢〜裏赤石沢〜大雪渓沢〜シシボネ沢〜小雪渓沢

記録
独自の5大要素(体力・登攀・悪さ・藪漕ぎ・水量)を1〜6段階で数値化した沢の個性化パラメータです。従来のグレード(難易度)とは異なります。
・定義や意図は「源流徘徊」を参照。
・従来の一般的なグレードについては、たもしまが付けているものを採用しています。
★10段階で評価。個人の好みや思い出要素も含みます。
- 赤石沢(南沢):3級上(今回遡行)
澄んだ水に赤いラジオラリアチャートが映える、超グラビア沢。北沢出合より下流は、通常時は取水されており難しい所はなくなった。門の滝や大ゴルジュの最初の滝は、通常巻かれているが、平水であれば直登可能である。魚影は濃い。 - クズレ沢:3級上(今回遡行)
序盤に4段90m程度の大滝があるが、水線通しの登攀は困難で、左岸から巻き気味に登ることになる。以降も滝が結構あるが、大高巻きするような箇所はなくスムーズに標高を稼げる。集水域の割に水量は少ない。源頭はカール状のガレとなる。登るにつれてヌメる。 - 裏赤石沢:3級上(今回下降)
百間平沢出合より下流は、登るのも下るのも苦労しない、手頃な滝が多い。2100m付近の赤いゴルジュは見応え有。二俣より上流も滝はあるが、ゴーロの割合が高い。赤石岳にほぼ直接詰め上がる遡行ルートとしては価値がある。 - 大雪渓沢左俣:4級下(今回遡行)
地理院地図で獅子骨沢と記載されている沢。豪雪に磨かれたスラブが発達した沢で、開放的で景観が良い。難しい滝は殆どなく快適に標高を稼げる。2300二俣で右俣に入ると上流は長大なガレとなるようだが、今回左俣へ入った結果、水涸れまで滝が続いており、詰めの藪も無くて良かった。 - シシボネ沢[獅子骨沢]:3級上(今回下降)
本当のシシボネ沢はこっち。出合付近から総落差100m程度の連瀑帯となっており、ここが遡行でも下降でも核心となる。下降の場合は懸垂下降の連続となる。上流はガレゴーロが殆どであり水は伏流気味で遡行価値は低い。継続遡下行時の下降ルートとしては価値がある。 - 小雪渓沢:4級(今回遡行)
ゴルジュが非常に発達した沢で、登っても登ってもゴルジュに滝がある。多くの滝は直登可能で、直登できない滝も小さく巻けるため、飽きることなく登れるが、それなりに悪い物が多いため、中上級者向け。豪雪地に特徴的な悪さがある。
※訪渓順に掲載
赤石沢は大井川上流部で代表的な沢の1つであり、今年実施中の大井川上流部集中調査の対象として、欠かせない1本である。百間洞だけは近年もよく遡行されているものの、クズレ沢、裏赤石沢、大雪渓沢、小雪渓沢等の支流は登山大系等に掲載されているにもかかわらず、近年の遡行記録を見ない。しかも、大雪渓沢や小雪渓沢は讃辞と共に紹介されているにもかかわらず。そのため、今回はこれら支流の現況の調査を主目的として、3泊4日の日程を確保し、継続遡下行してみることにした。
赤石沢本流~クズレ沢(1日目)

牛首峠から少し下り、このグラグラする梯子で沢床に降りる。


ニエ淵:かつては難所だったらしいが、取水されている現在ではなんてことはない。

「神の淵」らしい。初登した昭和山岳会による命名だが、随分大仰な名前を付けたものだなぁ。




門ノ滝:通常巻かれているが、じっくり見ていると左の水流の裏を横断し、右の水流から直登できそうな気がしてきたので、トライ。


CSの下からの景色。景観もだが、音も凄い。

空荷になって、右の水流を直登。抜け口は左へ。高巻かずに登れてよかった。

洞窟の滝は、通常通り右から登る。残置は多いが使わなくても登れる。

クズレ沢出合:ぱっとしない出合だ。時間に余裕があるので、シシボネ沢出合まで往復してみる。

赤いラジオラリア板岩が、ここにきて沢床全体に広がる。こりゃすごい、800本近い沢に行っているが、こんなのは見たことがない。


クズレ沢に入ると、急なゴーロの後、滝がいくつか出てくる。この6m滝は左から登ったが、ちょっと厄介だった。

これが、クズレ沢の大滝。デカい。

大滝を登りにかかるが、水線は厳しい。スラブを少し登ってから左岸の灌木帯へ入ったが、そこも急でそれなりに大変だった。

大滝の途中で水流に戻り、上部の直登を試みようとすると、なんだこのカラフルな岩は?

このカラフルな岩の箇所から直登を試みたが、ホールド乏しくぬめるので諦め、左岸に戻って巻いていく。

落ち口の直下で水線に戻り、直登。写真だけ見れば、物凄い高さの滝をフリーソロしているように見える。

大滝の上は直登できる滝や、

直登を試みる気になれない滝(17m滝)が、連続する。

7m滝も、登れるかもしれないが、面倒なので巻き。

11mCS滝も巻き。

割と平坦な流れになったところで幕営。
クズレ沢〜裏赤石沢(2日目)

2日目もゴルジュが出てきて、小さめに巻いたがそれなりに悪かった。

短い伏流箇所を経て、開放的になってくる。


源頭部は開けていてなかなかいい感じだ。

最後は、山々をバックにガレを詰める。

赤石山頂を経て、裏赤石沢の下降に入る。源頭部はガレと露岩が混じり、結構下りにくかった。



上部は滝が少ない沢だったが、百間平沢出合が近づくと滝が増えてくる。

百間平沢出合:百間平沢の方が水量は多い。

6m,3m,6mの連瀑はすべて左岸をクライムダウン。

赤いラジオラリア板岩のゴルジュが出てきた。ここもクライムダウンするが、

下にある2段10m滝は巻き下った。程なくして赤石沢本流に出る。

赤石沢本流を下っていくと、何やらどでかい淵が出てきた。「大淵滝」だ。泳ぎを覚悟するが、

結局クライムダウンし、右岸をへつれば、泳ぐ必要はなかった。それにしても立派な淵だ。

大雪渓沢出合の少し上流に素晴らしい適地を見つけたので、幕営。

たなが釣ってくれた立派なイワナ。美味。

大雪渓沢の出合の下流も見に行ってみたところ、赤石の巨岩が凄かった。
大雪渓沢〜赤石沢大ゴルジュ~シシボネ沢(3日目)

翌朝は、大雪渓沢へ入渓。最初から滝が連続。

ヌメりが少なく、快適に登れる小滝が多い。

大滝。直登はできそうにないが、右岸からあっさり巻ける。

9m滝は右から小さく巻く。

中央に赤石のある5m滝。厳しそうに見えたが意外と水線を登れた。

2段5mの滝は激シャワー。その後も登れる滝が連続。

25m滝は直登は不可能だが、ロープを出して左から巻き気味に落ち口へ出られた。

その後も水線を登れる滝が多く、面白い沢だ。



二俣は、詰めが短くて済みそうな左へ。


左俣はかなり上の方まで斜瀑が続き、当たりの沢だった。

最後は苔が綺麗な湧水で終わり、殆ど薮のない楽な詰めで聖岳東尾根へ出る。

シシボネ沢は、上部は何もないガレゴーロの沢だが、左岸側壁だけ立派。

だいぶ下ったところでゴルジュが出てきて、8mCS滝は流木支点に懸垂下降。

赤いゴルジュが始まった。ここから懸垂下降が連続。


シシボネ沢を降りた後に目指す、赤石沢大ゴルジュが見えてきたが、あんなの登れるのか?

懸垂下降を4回も連続してシシボネ沢を下降した。

大ゴルジュの最初の滝… 登れそうに見えないが…

しかし近づいて見ると、可能性はありそうに見えたので、取り付いてみると、登れてしまった。

大ゴルジュは水流の迫力が凄い。結局水流通しでの遡行はかなわず、一段目を登ったところで右岸から巻きに入る。

降りてきたシシボネ沢を振り返ると、滝だらけ。ありゃ、下るの大変だったはずだわ。

右岸を小さく巻きながら見た、大ゴルジュの核心部。登れそうに見えない。

真下にあるこれも登れそうに見えなかったが、大木輝一氏はここは登っているらしい。


大ゴルジュの上流側から下流側をのぞき込む。大西良治氏らがキャニオニングした際の残置支点が残されていた。

大ゴルジュを抜けた先にあった、最近の幕営跡地で幕営。
小雪渓沢~聖岳東尾根下山(4日目)

最終日は小雪渓沢へ。序盤からCS滝が出てきて、ロープ使用で登攀。

12mCS滝は、幸いにも右から楽に巻けた。

多段30m斜瀑をフリーソロで快適に登攀。



左から登ったこの滝は、遡行図の15m滝か。

ゴルジュはすごいが、弱点がちゃんとある。


絶望的な10m滝も、案外楽に巻けた。

今度はCS滝が連続するが、どれもこれも登れる。


この奥の11m滝が、この沢で最も厄介だった。

11m滝を登るtamoshima。このあとハーケンを打ってA1して突破。

ガスってきたが、滝はまだまだある。

2520mの二俣。初登ではここを左へ行っているが、ゴルジュの続く右へ。

右へ入るとゴルジュではあったが、大したことはなく終わった。

最後は詰めを若干ミスり、長めのハイマツ薮を漕いで、稜線へ。ひたすら東尾根を下り、入渓点に戻って、牛首峠へ登って終了。
・感想(たな)
リニア調査の関係で林道通行許可をいただき、赤石沢流域ローラー調査を敢行。
トンネル掘削予定地よりやや下流だが、一部の見立てでは赤石ダムより上流部は影響を受ける可能性があるとされている。
ラジオラリア(チャート)や石灰岩は、海の底だった山脈の過去を教えてくれた。チャートは固いので、本流と各支流ともに赤い岩盤が出る場所はゴルジュや大滝が発達しているように見える。各沢の個性を存分に味わう沢旅が出来た。
赤石沢本流区間は魚止めの概念が無く、釣れたイワナは全てヤマトイワナの特徴を持っていた。
皮肉なことに、リニアで水涸れが懸念されてる大井川本流上流部よりも、赤石沢含め魚止めが効いてる中部支流たちの方が純血ヤマトが元気に暮らしてる気がする。近現代の放流と切り離されて、残っているのだろう。
良い沢で良いラインが引けて大変満足だった。
どうか、この環境が後世まで続いてほしい。
・感想(たもしま)
初日、登攀した記録を見たことがない門の滝を直登でき、嬉しかったが、登山大系では左岸を直登できると書かれているクズレ沢大滝が、直登とは言えないようなラインでしか登れず、ちょっと残念だった。後で分かったが、これは登山大系の誤りと言ってもいいと思う。
2日目、クズレ沢上部は悪くはない渓相だったが、北沢に比べると劣るのかもしれないと思った。そのうち北沢にも行ってみようかな。裏赤石沢上部は殆どガレゴーロで残念だったが、百間平沢が合流する周辺から滝が増えてきて、まずまずだと思った。
3日目、大雪渓沢は越後のような渓相で、南アにもこんな沢があったのかと驚かされた。シシボネ沢は上部はほとんど何もなかったが、下部の連瀑帯が想像以上に立派でまた驚かされる。50mロープでぎりぎり残置なしで懸垂下降できて良かった。大ゴルジュ最初の滝は意外と簡単に登れたが、その先が厳しく、夕闇迫る中で巻きに入った所、結果として非常に効率的に巻けてほっとした。
4日目、小雪渓沢も越後のような沢だったが、これは険悪な方の越後の沢だった。終わらないゴルジュと滝にげっぷが出そうになるくらいだった。最後は聖岳東尾根をまっすぐ下り、綺麗に出発点へ繋げて美しい軌跡が完成。
全体としては、思い描いたとおりの継続遡下行を完遂でき、大変満足である。中央新幹線工事により水量等の環境が悪くならないことを祈りたい。
赤石沢の支流群の中でも大雪渓沢、小雪渓沢は特に遡行価値が高いと感じた。本記録を参考に、百間洞だけでなく支流ももっと遡行され、この山域の多様性を味わう人がもっと増えれば本望である。
装備・コースタイム
1日目:7:31 牛首峠 – 8:09 ニエ淵 8:25 – 9:37 赤石沢堰堤 9:49 – 10:57 門の滝 11:12 – 12:42 赤石沢大ゴルジュ 12:44 – 16:59 宿泊地
(合計9:28/距離7.9km、登り1,430m、下り411m)
2日目:6:04 宿泊地 – 9:35 赤石岳避難小屋 9:37 – 9:43 赤石岳 9:47 – 9:51 赤石岳避難小屋 9:52 – 14:52 裏赤石沢出合 14:58 – 15:15 大淵滝 15:28 – 17:18 大雪渓沢出合
(合計11:14/距離8.1km、登り1,101m、下り1,393m)
3日目:6:27 大雪渓沢出合 – 11:28 大雪渓沢遡行終了 – 15:41 赤石沢大ゴルジュ 16:54 – 17:16 宿泊地
(合計10:49/距離5.2km、登り1,207m、下り1,283m)
4日目:5:59 宿泊地 – 12:52 小雪渓沢遡行終了 – 13:26 白蓬ノ頭 13:39 – 14:20 栂山 – 16:25 牛首峠 16:32 – 16:33 帰着
(合計10:34/距離7.4km、登り1,071m、下り1,716m)
・概ねラバーソール適
・ロープは50m1本、シシボネ沢懸垂下降でフルに使用
遡行図




赤石沢流域概念図

地名
赤石沢には昔から伐採等で人が入っていたようで、滝や淵や支流に多くの地名がある。
牛首峠より上流の支流名は、下流から順に前北沢、北沢、奥北沢、白アイ沢、クズレ沢、シシボネ沢[獅子骨沢]、間ノ沢、小雪渓沢、向沢、大雪渓沢、滝沢、裏赤石沢(その右岸支流は百間平沢)である。このうち前北沢、奥北沢、白アイ沢、間ノ沢、向沢、滝沢は1954年に昭和山岳会が遡行した際に付けた地名である(山と溪谷185号初出、現代登山全集 第5巻再掲)。奥赤石沢と百間洞のどちらを本流とするかは文献によって異なる。奥赤石沢の支流として奥雪渓沢、百間洞の支流として中盛丸山沢がある。
・白蓬ノ頭と白アイ沢について
「白蓬ノ頭/白蓬沢ノ頭」の山名は明治37年にこの地に設置された三等三角点「白蓬沢」に拠ると思われる。この三角点名の由来は小字名と推測され、この山に詰め上がる沢として「白蓬沢」があったわけではない。その後、草冠を見落とした者により「白逢ノ頭/白アイノ頭/白アイ沢ノ頭」という誤称が流布していた時代があり、これに基づいて、赤石沢の門の滝に右岸から流入する沢に「白アイ沢」の名称が付された(現代登山全集 第5巻)が、この沢は山頂よりはるか下に源頭がある。実際に白蓬ノ頭を源頭とする沢の名称は無いか、現代まで伝承されていないと思われる。
他の記録
・本流(南沢)
記録多数。初めて紹介したのは平賀文男(「赤石溪谷」,1933)だが、奥赤石沢から北沢出合付近までの下降に留まっている。当時は北沢出合付近に鉄砲堰や小屋があったらしく、そこで下降を終了している。椹島から通しでの初遡行は、1954年に昭和山岳会により為された(現代登山全集 第5巻,1961)。
門の滝、大ゴルジュの滝を登った記録は未見。大ゴルジュの最初の滝は大木輝一らにより2023年に登られているが、記録は出されていない(大木、私信)。
・クズレ沢
改訂 現代登山全集 第5巻(1965)に、昭和山岳会による1964年8月の初登記録が掲載。なお、同書の初版には掲載されていない。他、登山大系に掲載。
・シシボネ沢
登山大系に掲載。岳人337号(1975年7月)に石間哲男らによる遡行記録掲載(未読)。岳人397号(1980年7月)に遡行記録掲載(?)(未読)。
・小雪渓沢
岳人325号(1974年7月)に、蒼山会同人による1973年7月の遡行記録(恐らく初登)が掲載、新岳人講座 5 (1981)に再掲。他、登山大系に掲載。
・大雪渓沢
改訂 現代登山全集 第5巻(1965)に、1958年に昭和山岳会により初登された記録が掲載。その他、登山大系、沢登りルート図集100選、関東周辺の沢に掲載。
・裏赤石沢
登山大系に掲載。現代登山全集 第5巻(1961)に、昭和山岳会による1955年8月の遡行記録が掲載。岳人337号(1975年7月)に石間哲男らによる遡行記録掲載(未読)。
近年の記録としては、2013年7月に泉州山岳会が百間洞と誤認し、左俣の百間平沢を遡行している。
〇本件ヤマレコはこちら
1994年生。ぶなの会所属。大学に入ったタイミングで沢登りを始め、沢登り歴13年、訪れた沢は約1000本。沢を登るだけでなく下りも交え、一層その流域への理解を深めたいと考えている。最近は、情報の乏しい隠れた秀渓を探すのにハマっている。


























































































