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飯豊|梅花皮沢 滝沢遡行・石転ビ沢下降

2024.09.28

「飯豊と朝日は似ていてどちらも良い沢があるが、飯豊は悪い」
誰が言ったかそんな評価が独り歩きしており、いつしか飯豊の沢は気軽に手が出せない畏敬の存在になっていた。梅花皮沢滝沢の存在を最初に聞いたのは2018年頃で、当時沢を始めるくらいのタイミングだった私は梅花皮を「かいらぎ」と読む事すら知らなかった。知らないなりにも、話を聞いて何だかとてつもない沢だ感じた事を覚えている。
そして2024年、記録的な寡雪の年で天気も良いチャンスの週末が来た。
少し背伸びかもしれない。でも今なら、手が出せるだろうか?

記録

日程
2024年9月28日〜29日
メンバー
たもしま、たな
天候
曇り一時晴れ
体3攀4悪4藪1水2
たもしま★10、たな★10
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独自の5大要素(体力・登攀・悪さ・藪漕ぎ・水量)を1〜6段階で数値化した沢の個性化パラメータです。従来のグレード(難易度)とは異なります。

・定義や意図は「源流徘徊」を参照。

・従来の一般的なグレードについては、たもしまが付けているものを採用しています。

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★10段階で評価。個人の好みや思い出要素も含みます。

  • 梅花皮沢・滝沢:4級上
    梅花皮の滝、下部・中部・上部ゴルジュいずれも見応えも登り応えもある秀溪。雪渓の少ない年でないとゴルジュ内を遡行することは出来ない。ラバーソール適。
  • 石転ビ沢:1級
    雪渓の残りやすい沢で、春は雪渓上を歩く登山道として利用されている。雪渓が消えると長大なゴーロの谷となり、圧巻の景観ではある。滝が3つ程度あるがいずれも容易に巻け、遡行対象としてはつまらないが、滝沢遡行時の下降ルートとして有用。

飯豊山荘近くの、砂防工事用道路ゲート前のスペースへ駐車。最初は快適な林道を歩き、堰堤を超えたら登山道になるが、あまり整備はされていないようで藪っぽい。滝沢と石転ビ沢の二俣付近から河原へ降りて入渓した。

真っ白に磨かれたゴーロ帯を進み、滝沢最初の6m滝は右からフリーで登る。

少し進むと、梅花皮の滝が見えてきた。7段200mと言われる大名瀑への入り口だ。ちなみに沢登り的には7段目はカウントされずF6までで語られるため、それに倣う。落差は測量データで計測すると183m。デカい。

F1~F2は右岸スラブからフリーで登る。壮大すぎて最下段から滝の全貌は見渡せない。

右岸から1本美しい支流滝が合わさる。F2とF3の間は広いナメと大きな釜の広場になっており、この造形美を生み出した自然のセンスに脱帽と言うほかない。F3からF6を見上げるが、F5は隠れて見えていない。

F3は左から取り付き、水流へ。最後がツルツルで神経を使う。

F4は水流左をペタペタ登っていく。振り返るとスケール感と高度感が素晴らしい。

水流を跨いで落ち口へ。

F5は水流右の凹角からショルダーで登ってみる事にした。私が胸くらいまで漬かって土台になり、たもしまに乗っかってもらう。ええ、夫の方が体重軽いんです。

F6は端正な50m直瀑。右側凹角から私がリードで取り付く。下部は砂に埋めたハーケンで申し訳程度の支点を取り、その先は細い灌木やカム等で支点が取れる。壊れた残置ボルトでエイドしている記録もあるが、普通に登った方が早いと思う。突っ張り、手に足、絶妙に良いところにカチがあり面白い。ロープの流れがスムーズだったため、上部の灌木帯まで一気に登った。

1ピッチ目終了点から。2ピッチ目は実質藪歩きになってしまったが、たもしまがロープを引いて進んだ。

時刻は11時前、無事に梅花皮の滝を登り切り一安心。落ち口の景色が素晴らしい。どこから見ても全景を望むのが難しく、全貌は空からしか見られない秘瀑中の秘瀑と言われる滝を、できる限り水線に近付いて登れたので嬉しかった。

岩盤が凄い色になってきた。

下部ゴルジュに入る手前で、右岸から赤ツタ沢が出合う。面白そうな支流にそそられ、寄り道調査してみる事にした。

快適に登れる小滝をいくつか越えていく。岩はずっと赤っぽく、黄鉄鉱の鉱脈がキラキラ光る。なんだかメタリックな沢だ。手のひら大の綺麗な結晶が転がっていたため、持って帰る事にした(帰宅後量ったら500g程あった)。少し先で大きめの滝が出てきたので、本流へ引き返す。

間髪入れずに下部ゴルジュが開幕。有難い事に、雪渓は1欠片も無い。こんなの前代未聞じゃなかろうか。岩の凹凸はちょうど良い形で繋がっており、フリクションも良い。思う存分ゴルジュ内部を楽しむ。

たもしまが泳いで左壁から上陸。フリクションが良いのでトラバース系の突破もやりやすい。ヘルメットを一時的に外しているのは、水中激泳ぎを警戒したためだ。

オレンジの岩と、白い岩と、真っ青な水。なんという極彩色。
上部ゴルジュを抜けると明るく開放的な河原に出る。当初、幕営予定地と考えていた場所だが時間が早いので今日中に中部ゴルジュも抜けてしまう作戦にした。

少し進むと中部ゴルジュ入り口の滝が見えてきた。ガスが出てきて幽玄な雰囲気を醸し出す。左側から小巻きで登ってみる。

とんでもない高度感。改めて見ると凄い絵面だ。ホールド、スタンスは安定してるが落ちたら終わりなので慎重に慎重に。

落ち口を過ぎると多くの記録で雪渓に埋もれている区間だが、どうやら中身はゴロジュだったようだ。相変わらず側壁の威圧感は凄いが、問題なく歩ける。奥にまた絶望的なCS滝が見える。

下部ゴルジュがオレンジゴルジュだとして、中部ゴルジュはブラックゴルジュか。

左側にラインが繋がっており、小巻きして落ち口から上流側を見る。こんなド迫力異空間ゴルジュが、しっかり地形の弱点を用意してくれている。なんという奇跡。奥に見えるCS大滝は右側のルンゼから巻く。

ちょっとボルダリーな岩間滝。

中部ゴルジュ最後のCS滝。過去の記録では左岸(向かって右)から大巻きしているが、左壁も繋がっていそうだったので試してみた。結果、左岸より小さく巻けたので良かった。

巻き途中、振り返る。ゴルジュ側壁をトラバース気味に登っていく。

中部ゴルジュと上部ゴルジュの間は、そんなに距離が無い。両ゴルジュの出口と入り口の両方が見える場所だが、かなり頑張って整地したら快適なテンバになった。夜は上部ゴルジュから吹き込む風で冷えるが、ひょっこり出てきたサンショウウオと一緒に焚き火で温まった。

翌朝、上部ゴルジュ入り口へ。ミッチミチにCS滝が詰まっている。

ハンマー投げからの激シャワー。

上部ゴルジュ最後の滝。もしかしたら、CS右側をエイド交じりで登れるかもしれない。最後の未知課題として残しておくことにした。たもしまがリードで、右岸側壁から回り込んで登る。見た目よりスタンスがしっかりしており、カムが随所に決まりありがたい。トラバースからの直上という立体的なライン取りになる。

後ろを振り返る。上部ゴルジュは全体的に白くて明るい。

上部ゴルジュを抜けると、底抜けに明るい渓相の中フィナーレへ。最後は藪も無く、サラサラとした草原を歩いて稜線へ出た。

たおやかや飯豊の稜線を眺める。もうすっかり秋の空だった。

石転ビ沢の雪渓は、端っこに破片が残るのみ。今年は本当によく雪が解けたようだ。

ゴルジュの滝沢のすぐ隣に、ゴーロのみの平和な沢があるのはアンバランスで不思議だ。歩きやすくて、景色も良い。満足して、行きも通った登山道を使い下山した。

車に戻ったのは14時過ぎ頃だった。あまりにも順調だった山行を終え、心地良い満足感とともに、なんとも表現しがたい不思議な感情がほんの少しだけ残った。腹をくくって向かった梅花皮沢は、覚悟していたより人類を受け入れてくれる谷だった。

それもこれも、雪渓が完全に消えた好条件が授けてくれた恩恵に違いない。飯豊にはまだまだ行ってみたい沢がある。少しずつ、この山域について知っていけたらと思う。

装備・コースタイム

1日目:6:09 飯豊山荘上駐車場 – 6:22 温身平 – 6:32 梅花皮沢第4号砂防堰堤 6:33 – 8:20 梅花皮の滝 11:05 – 14:49 宿泊地
(合計8:40/距離8.5km、登り1,321m、下り402m)

2日目:5:59 宿泊地 – 9:23 梅花皮岳 9:25 – 9:37 梅花皮小屋 9:51 – 11:46 石転びの出合 11:50 – 13:47 梅花皮沢第4号砂防堰堤 13:48 – 13:55 温身平 – 14:11 飯豊山荘上駐車場 – 14:12 帰着
(合計8:13/距離11.8km、登り880m、下り1,792m)

ラバー適、クライミングシューズ未使用、トーテムカム類一式、ウェットスーツ

遡行図

下山メシ&周辺施設

○藤よし
タカキビを練り込んだ名物タカキビうどんと美味しい定食をいただく。

他の記録

・渓谷登攀(大西良治,2020)

〇本件ヤマレコはこちら

1996年生。就職後に沢を始め実践歴8年、訪れた沢は約600本。SAWA MAFIA所属、源流徘徊主宰。山・渓・里を繋ぐ沢旅が好き。オリジナルラインの遡下降と山の背景ネタを大切に、沢起点で流域の風土をまるごと読み解く探究を目指している。